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開けばいつでも、その本だけの時間が流れている、
「絵本」というたたずまい。
眠る前のベッドで読むことがほとんどだからだろうか、
そのどっしりとした世界に身をゆだねる心地よさは、圧倒的だと思う。
「臆病のかたまり」だった幼い頃のわたしは、
気付けば自分が何を感じているのかわからなくなってしまっていて、
そのことが本当に苦しかった。
そして自分の過去に対してはちっともリアリテイを感じられなかった。
ゆえに、
一度離れた土地をふたたび訪れた時の寂しさ(●)に畏縮し、
心の中でぽっかりと空いている穴(●)におびえていた。
そんなわたしが子供を産み、
絵本の世界に目を向けるようになって、
懐かしい絵本に再び出会い、涙を流した。
そこにはちゃんと、幼い頃の自分が存在していたのだった。(●)
わたしにとって「絵本をよむ」ということは、
埋もれた自分の記憶を、皮膚や内臓や骨といった体の感覚レベルで引き出すこと。
深い想いで体を満たす。
その時をしっかり生きていたのだ、という事を体はちゃんと記憶している。
ずっとずっと、
"守られること"や"帰る場所"に対して憧れ続けているように思う。
そして今日も、子供達と共に布団にもぐりこみ、
絵本の中の散歩を続けている。
子供達が大人になっても、自らの埋もれゆく記憶の中から、
このにごりのない瞬間をいつでも引き出せるようにと願いながら。
2003.3.1.
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