「エマおばあちゃん」
ウェンディ・ケッセルマン 文 バーバラ・クーニー 絵
もき かずこ 訳
クーニーの描く「ひと」「景色」「時代の空気感」、
常に整っていて、どこか冷たいんだけど愛らしくて、すきなのです。
(ひとびとは姿勢もいい!)
それそのものであろう、と読んでいるものに伝えてくれる緻密さ、忠実さがあって、
存在が整然としている、といったらいいのか。
クーニー自身、ストーリーを充分に解釈しているのがよくわかるのです。
実際彼女は、研究や、実際現地に赴くことや、デッサンする努力を惜しまなかった方だそうです。
72歳のたんじょうびを迎えたエマおばあちゃんは、こどもやまごやひまごにお祝いしてもらいますが、
それは一瞬のにぎやかさで、ふだんはひとりぼっち。
エマおばあちゃんは、しましまねこといっしょに、すきなことをして過ごすのでした。
エマおばあちゃんは、贈り物に子供達からふるさとのむらの絵をもらうのですが、
「わたしの覚えている村とはまるでちがう!」といって、
自分でえのぐとふでとイーゼルを買い、ひそかに絵を描きはじめるのでした。
絵はなんまいにも、何十枚にも、なんびゃくまいもにもなりました。
絵をみにあちこちからお客さんがやってくるのですが、帰ってしまえばまたひとりぼっち。
でもエマおばあちゃんはもうさみしいとは思わないのでした。
色づかいもとっても明るくてわくわくします。
そして、ちょっとぷっくりしているのがご愛嬌のエマおばあちゃんの素敵なこと!
特別感なく描かれているけれど、そのどっしりとしたオーラをまとった姿は魅力的。
ルピナスさんにしろ、エミリーにしろ、
クーニーの描く女性にはぶれがない。
とぐちにふきよせられたゆきの絵、
りんごの木とキツツキの絵、
ひなたぼっこしているしましまねこの絵、
一枚ずつ紹介されている場面は、クーニーの展覧会を楽しませてもらっているようです。
なにより、エマおばあちゃんのふるさとの村の絵のもつ元気さがすきです。
そして表紙にある、
赤土色をおびたタイルの上に置かれた立派なキャビネットに
おばあちゃんが大切にキャンバスを納めているシーンにも心つかまれます。
キャビネットの中はおばあちゃんの作品でいっぱいなのです。
あ、絵を描くっていいな、って素直におもう。
哀愁や切なさに終わるのではなく、
「たのしかった!」と読み終えることができます。
クーニーの絵本は、どれも、
日常を穏やかに過ごしていくための心の置き所を教えてくれるようです。
2008.7.16
以前の絵本日記よりクーニーの本
・「ルピナスさん」
・「にぐるまひいて」
・「うまやのクリスマス」 |
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