「うまやのクリスマス」
マーガレット・ワイズ・ブラウン ぶん バーバラ・クーニー え
まついるりこ やく 童話館出版
クリスマスイブ。
昼間ふっていた雪もおちついて、
サンタが来るか見たい!っていっていた子供も寝てしまい、
わたしはひとり、なかなか寝付けなくて、
布団の中で、しばらくこの本をひらいて眺めていた。
去年 娘に贈った本だ。
マーガレット・ワイズ・ブラウンの文の静けさは、
娘がまだ赤ちゃんだったころの空気を思いおこさせる。
山の上の古い一軒家に暮らしていたころだ。
昼間はきゃっきゃと賑やかに暮らしをかき回す娘が、
夜ねむりにつくと、急にあたりが静かになり、ものが輪郭をあらわす。
外の木々の葉のおちる音、かさこそとした風の音が耳をかすめる。
家をかこんでそびえる背の高い杉の木の輪郭が、蒼い空に、黒くくっきりと浮かび上がる。
見上げると無数の星がまたたく。
山の夜は深かった。
傍らでねむる娘は、とてもあたたかかったのが思い出される。
うまやの中で、うしやろば、うま、のねずみ、ひつじたちに見守られ、
この世にうまれたおさなご。
キリスト誕生のよるの、質素で奇跡的な感動が描かれた一冊。
マーガレット・ワイズ・ブラウンの安らぎに満ちた詩文と、
バーバラ・クーニーの繊細で力強い木版画は
いやおうなく神聖なやすらぎを与えてくれる。
モノクロで切り出された絵は、まさにあの、
娘が赤ちゃんだったころの、深い闇の中の杉の木の輪郭と同じ。
赤ちゃんの誕生を祝う周りのまなざしや、無垢な命の輝きもまた、
あの頃の家族のあたたかさや、娘のまんまるな目のうつくしさと、
かわりはないのでした。
2007.12.25 |
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