ゆき 
ユリ・シュルヴィッツ さくまゆみこ訳 あすなろ書房


秋と冬の境目は、ゆきが降った日。
真綿をちぎったような、小さな白いゆきが空から舞い降りてくる瞬間にでくわす、
そのよろこびはいつの年も新鮮。

むろんはじめの一降りは、お日さまのひかりにはかなくも消えさってしまうものだけれど、
それでもちらちらと空の気配を気にし、ゆきを待つ。

後から後からゆきはふってくる。
夜の間ふり続いていたことに気がつかず、
朝起きて窓の外にまっしろな光景が広がっていると、感激する。

ユリ・シュルヴィッツが描いた、街が雪におおわれていく瞬間のお話。

街と、街をいきかう大人達のかもしだす、どんよりとした空気の中で、
ひとひらのゆきと、それをみつけるオトコノコの表情はきらりと輝き、
とてもいとしく感じられる。
街は暗くよどんでいる。
大人達は、無表情なようで、
そのすました顔の奥に、しっかりと体温を感じさせる個性をもっているところがいい。
グレーににじむ街と空は、繰り返す日常の混沌とした空気の色と似て、
あたたかなものの輪郭を感じさせてくれる。

よあけ」同様、ユリ・シュルヴィッツの得意とするところだろうか。

辺りをすべて白く覆いかくす雪は、いつもいる場所を一変させ、
お店の看板のハンプテイダンプテイや月も、
オトコノコにははしゃいでいるように見える。






今年雪がふりはじめたのは、お正月。
朝早く、松本に向かう車の中から、美しい霧氷を見ることができた。
空気中の水蒸気が木の枝に凍結してできた氷の結晶。
やはりまっしろな雪と氷の世界は常に幻想的で、
太陽のひかりが反射してきらきらとかがやいている姿は、神々しいまでにうつくしい。
まっさきに頭に浮かんだのが、この絵本の、空が青く澄みわたるラストシーン。





2005.2.23



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