「つみきのいえ」
絵・加藤久仁生 文・平田研也 白泉社


恵比寿の書店で、ご一緒した編集者のYさんに紹介いただいた、
海外でもたいへん大きな評価を得たという加藤久仁生さんの同名アニメの描き下ろし絵本です。

舞台はうみの水がだんだんあがってきてしまうまち。
おじいさんは、家をつみきのように上へ上へ建ててこのまちで暮らし続けてきました。
ある日大事な大工道具をうみに落としてしまいます。
潜水服を着て、うみにもぐって探すと、だいくどうぐは3つ下の家におちていました。
おじいさんははっとします。
そこは、おばあさんと暮らし、そしておばあさんが死んでいった家だったのでした。
下のいえへ、下のいえへもぐっていく。
どのいえにも、どのいえにも、おじいさんの思い出がつまっているのでした。

「おじいさんは、うみの中に”思い出”を落としていたんだね」と娘はつぶやいていました。
どんなひとにも、つみかさねてきた歴史があります。
それはすばらしいことだとおもいます。
おだんごスープ」もそうなんだけど、
生き続けてきたひとがちょっとしたきっかけでその深い道のりをふりかえり、
しみじみと感慨にふけるお話には
ついつい涙腺が緩んでしまいます。
時間の経過のもつ重みには、とうていかなわない。

パイプをくわえたおじいさんのずんぐりぐあいが愛らしい。
繊細で繊細で、こわれないで、と願う世界がこの中にあります。
最後のページのおじいさんの表情、とってもやさしいです。


2008/12/9


※ころんころんとした音楽の余韻のここちよいこのアニメもすてき。



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