「チップとチョコのおでかけ」
どいかや 著文溪堂
マフラーがあたたかいと思ったのは、
ひとりで暮らしはじめてからでした。首に巻くこと自体が苦手であったし、
おしゃれをすると必ず冷やかされて、気恥ずかしかったので、
マフラーは存在感がありすぎると思っていました。食べることがあたたかいと感じたのは、
子供が産まれてからでした。自分が作ったごはんを、おいしい!と口のまわりをたっぷり汚しながら食べる娘を見て、
今までただ空腹や、華やかさへの探究を満たすために食べていたような気がしました。山で生活するようになって、
小鳥やおはなも、わたしと共に生きていることを知りました。
雪に覆われた墨絵のような冬を越した後に、
芽生えてくるみどりの若葉や、きいろやピンクや青の花。
色は何も音をたてず、
恐ろしく静かに心に入り込んでくることに気付きました。チップとチョコは、みんな知っているのです。
おばあちゃんから贈られた、きいろとあかのマフラーに大喜び。
首に巻いてお出かけするのだけれど、
途中で出会う、小鳥や、りんごや、お花に、気持ちがゆらいでしまう。
でも確かなのは、きっとあたたかに違いないこと。わたしの子供達も、マフラーをプレゼントしてもらった時は大喜びでした。
あたたかいことを、たくさん知っているみたいです。
きっとわたしよりも。チップとチョコがおばあちゃんの家で食べるピーナツパンは、
全くもっておいしそうで、
わたしは、
子供達がお昼寝から起きて食べるおやつに何を作ろうかと、
思いをめぐらせているのです。どいかやさんの色鉛筆の世界。
上質な毛糸のマフラーにくるまれているような気がします。
Thanks! DoiKaya-SAN.
2002.5.