「手ぶくろを買いに」

新美南吉作 黒井健絵 偕成社

山も木々も真っ白です。
静かに舞い落ちる雪は、何もかもを柔らかな白でつつみこみます。

あたたかいことをあたたかい、と胸の芯から感じる為に、
音も、温度も、色もない季節があるのだと思います。

このお話の雪景色の描写は、せつないほど美しい。
なんて美しいことばの響きだろう、とため息が出ます。

真綿におおわれた真っ白な銀世界の中、
牡丹色になってしまった「ちんちんする」おててを両手にくるんで、
はーっと息をふきかけ、あたためる。
眠りについたこどものふとんを掛けなおしてあげる時の心持ち。
冷え込みからこどもを守ってやろうと思う母親のココロは、
きつねも人間も同じです。

子供達が寝付いた後、布団を抜け出して夜なべをすると、
フウタは必ずといっていいほど、夜中に泣き出します。
わたしは共に布団に入り、背中をさすったり頭をなでたり。
すると安心して、またすーすーと寝息をたてはじめるフウタの顔を、
わたしは横でいつまでも眺めていたくなってしまいます。

でもいつまでもわたしの胸の中でこどもをあたためてあげるわけにはいきません。
外に出れば子供達は、鼻をたらしながらも、
積もる雪に必死で足跡をつけながらはしゃぐので、
手ぶくろをつけさせ、ボウシをかぶせ、
ふりしきる粉雪の中、親は子を守るのに必死なのでした。

黒井健さんの絵の中で、
子狐が買うことのできた手ぶくろも、とおくに光る町の灯も、
ほんとうに小さく描かれていて、
子狐が間違えてしまった手や、子守唄を歌う人間の母とその子の絵は、
描かれてもいません。

ぬくたさが、痛いほどココロに染みます。

どうしようもないほど美しい本です。
「あのね、サンタの国ではね...」
黒井健 絵 偕成社
一昨年の義母からのクリスマスプレゼント。一年中読んでいます。サンタさんはやはり大切な存在だし、そんなサンタが1年どうやって過ごしているのかがわかります....。プレゼントを配る大仕事を終えたサンタ達が夜明けと共に帰っていく絵がすがすがしく、印象的です。

絵本日記TOP