「喜びは創りだすもの〜ターシャ・テューダー四季の庭」







NHKで放送された「喜びは創りだすもの〜ターシャ・テューダー四季の庭」。
ターシャの1年間をはじめて映像として追ったドキュメンタリーです。
家で時間があればBGMのようにこの番組を流しています。

私が言う間でもありませんが、ターシャはアメリカで最も愛されている絵本作家であり、
世界中が憧れる庭を作り上げその中でコ?ギー犬と暮らすガーデナーであり、
入植時代のアメリカの暮らしを続けている90歳のおばあちゃんです。
ターシャの庭はこの世の楽園です。
しかしその姿は常に冷静で、厳しさまでもが伺えます。
田舎での不便な暮らしに耐えられなかった夫と別れてからも、
戦渦を生き抜き、4人の子供を育てあげ、
絶えず手と体を動かし続けて生きてきた彼女の決して平坦ではない90年の生涯が、
その空気をかもしだしているのだと思います。

ターシャは56歳の時に息子が18世紀の建築方式で作り上げた家に暮らし、
30年以上かけて庭をつくりあげました。
ニューイングランドの厳しい季節の変化に決して逆らうことなく、
ひときわ丁寧に、動物や草花を育て、機を織り、身の回りの服や布を仕立て、
食べ物をこしらえ1年分の食料を貯蔵し、ろうそくや石鹸を毎年作り続けます。
90年の間、つつましやかに創作し続けるターシャの姿に、
年を重ねていくことの美しい姿を感じ、
「喜びは創りだすもの」という言葉の重みに感動します。
今ターシャと共にこの時代を生きていることが信じられません。

「ターシャ・テューダーの世界 -ニューイングランドの四季(文藝春秋)」という本の中で、

「世界の人はバラ色のレンズを通してわたしを見ています。
わたしも人間であることに気付かない。
本物のわたしを見ていません。
マーク・トゥエーンが言ったように、わたしたちはみな月と同じで、
だれにも見せない秘密の部分を持っているのです。」(相原真理子訳)

という一節があります。
そのページには月がでてきたばかりの夕暮れ、黒いショールをかぶり、かぼちゃを脇に抱えるターシャの姿があります。
今の時代の人々はターシャの暮らしの贅沢さ、華やかさに憧れます。
しかしターシャはそれらをたえず努力し続けて、長い年月をかけて手に入れてきたということに、一番感動します。
ターシャの姿、そして発する言葉には力があり、
ひとそれぞれ自分の置かれた環境に対して、幸せを感じながら生きぬいていく姿勢の大切さがひしひしと伝わってくるのです。


2005.10.6




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