ロンパーちゃんのぷっくりした体。
ロンパーちゃんとお母さんの共有している時間。
ロンパーちゃんの手足のしぐさ。
この子を抱いたことがある、と思った。
いいこいいこしたり、ズボンや靴をはかせてあげたり、
寝るまでそばにいてあげたことがある、と。
数年前の胡桃とかさねあわせていることに気付いたとき、
すごく寂しくなった。
もう胡桃は大きくなっちゃったんだ。
ほんの少しまえのことなのに。
ロンパーちゃんのように、ふうせんといっしょになって遊べるのは、
ほんとうに、ほんの一瞬のときしかない、ということだ。
文章の簡潔さが美しい。
誰が語っているでもないけれども包容力のある言葉。
絵の色数は少なく、おとなしいけれども
ロンパーちゃんとお母さんの温度がより際立って感じられる。
なんてことない、ロンパーちゃんとお母さんの日常の風景。
でもこれほど染み入るものはない。
酒井駒子さんのこどもを描く力には参ってしまう。
そのしぐさが決して「かわいい」だけではないと思うのは、
絵の中に、大人の視点での、
平凡な暮らしを送ることの厳しさや、苦悩みたいなものも、
ほんのり混じっているような気がするからだ。
彼女の絵の中の子供の視線には、ときおり恐さを覚えることもある。
でも、この本の中に詰め込まれたあたたかさはなんだろう。
不思議なのは、読んでやると子供達もとても幸せそうな顔をすることだ。
03.06.19
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