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「オラウーちゃんとまほうのやかた」
工藤ノリコ 著
文溪堂
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黒くて大きくてもやもやしたものが襲いかかってくる。
逃げる。全力疾走で逃げる。
弟達の手を引いて。
顔を真っ青にして。
いくら逃げても、
足元も天井もじゃりが覆っているほら穴から抜けだせない。
足がもう動かないほどになって、
へたりこんだ先には、一面のお花畑が広がっている。
よかった。助かったんだ..。
花吹雪が散り、ラッパの音が鳴り響く。
わたしは涙をながして地にへたりこんでいる。
...................
本当は臆病で、
胸の奥を開放することを知らなかった娘であった。
うとうとしながら、よくこんな夢を見てうなされていた。
場面はいつも横にスクロールしながら、
何かから逃げ、
何かを助けようとしていた。
「オラウーちゃんとまほうのやかた」を読んでいるとほっとするのは、
そんな私の幼児期のせいだろうか。
「まほう」。
「おばけ」がいっぱい住んでいる館。
さらわれた兄弟を勇気をふりしぼって助けにいくこと。
これらは誰もが一度は想像を膨らませ、
その現実のようで現実でない恐怖の上をぷかぷかさまよったことのあるキーワードかもしれない。
近所に「おばけ」が住んでいると信じて疑わなかったビルがあったし、
ふたりの弟がいるわたしは、変に姉の使命感を持っていて、
その恐怖を倍増させていたに違いなく、
大人の言うことを守ることでしか安心を得ることができなかった。
工藤ノリコさんの絵の
かわいらしさ、線の丁寧さゆえだと思う。
おばけも、まほうの騎士もちっともこわくない。
かわいらしさが教えてくれたこと。
びくびくすることはなかったのだ。
子供といっしょに読むたびに思う。
冒険は楽しいもの。
オラウーちゃん、ばんざい!
Thanks! NORIKO-SAN.
2002.5.
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