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「木のうた」
イエラ・マリ さく ほるぷ出版
真っ赤に色づいていた木々が一気に葉をおとした。
めぐりめぐる一年の季節の移り変わりを、
ふうっ、とおちついてふりかえる。
夏の草木、とり、虫、動物達の勢いはとかくわたしの許容範囲を超えていて、
その力が徐々に平静をとりもどし、静かになって行く冬のはじまりは、
どこかほっとするところがある。(ひとやすみ、という気分!)
いつどこで買ったかすっかり忘れてしまったこの絵本。
絵本棚からとりだすのに今の季節があっている気がして、あらためて手にとる。
ページは、雪に覆われた地面から生えた一本の大きな枯木の絵からはじまる。
その雪の下では、草や豆やたんぽぽの種が力をたくわえていて、
あたたかくなると若葉の芽吹きと同様、土から芽を出してくる。
冬ごもりをしていた小動物も顔をだし、とりたちも木のもとへ。
葉は徐々においしげり、やがて実をつけ、
小動物はその実をたべつづけ、木につくられた巣からひなが巣立つ。
紅葉した葉は枯れ落ち、また灰色の冬をむかえる。
1年の変化を16枚の絵で伝えてくれる、言葉のない絵本。
きれい。
色も構図も、ほんとうにうつくしい本。
日々おこっている自然界の変化、うつろいというものを
過不足無く、とても整った形で表現してくれていて、
その端麗さに見入ってしまう。
本の中でくりひろげられる、リスの動きやたんぽぽの芽の成長、葉の色の変化に、
小さな子供も興味をもって敏感に反応するとおもう。
言葉がないだけに、芽の成長、枯れ朽ちる草木、巣立っていくとり達を、
幼い頃の息子はあれこれ指差し追っていた記憶がある。
大きくなってしまった私たち大人も、素直に美しいと感じることができると思う。
美しい本はふところが深い。
描かれているものは科学的なリアリティもあり、
背景にあるであろう生命の神秘的なストーリーを限りなく思い描くこともできる。
イエラマリという作者は、イタリアのグラフィックアーティストだそう。
「木」「自然」「生命」に対して、
叙情的になることもなく、
かといって"図鑑”のような淡々とした明確な表現ともちがう、
中立的な見解で、
大人の距離感をもって描いているイエラマリのアートのありかたに、
とても温かいものを感じる。
2006.12.1
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