「うちにかえったガラゴ」 
 
島田ゆか 作/絵  文溪堂


冷え込みが日々きつくなってきて、
首を縮めて子供達の送り迎えをしている。
そろそろ冬支度にとりかからなくてはいけない。

昨年のこんな季節。
幼稚園に胡桃を迎えにいくと、
いつも色紙とセロテープをフルにつかって何かを作っている彼女が、
その日は絵本にくいいるように見入っていた。
そんな姿をはじめてみたので、なによんでるの?と呼びかけると、
読んでいた「かばんうりのガラゴ」(この本の前身)をわたしにみせながら、
大きなおめめをした旅するかばんやのガラゴのことや、
耳が三本あるふしぎなうさぎ(のような生物)のことや、
ガラゴが大きなトランクの中から出す不思議なかばんのことなどを、
ひとつひとつ指さして、丁寧に説明してくれた。
まだ字が読めないだけに、絵のすみずみまで熟視しているのだった。

その年のクリスマスプレゼントに、続編であるこの本を選んだ。
そしてはまってしまった....。
本の中に繰り広げられる不思議な生き物達の送る1日。
絵のdetailにしっかりとそれぞれのストーリーが埋め込まれてあって、
読むたびに「あ、これさっきのイモムシだ」とか
「雪がいっぱい積もってきている」だとか
「りんごが減ってる」だとか、発見がつきないのである。

セリフは一切ない。でもリアリテイがある。
文章で語られていなくても、ひとりひとりが思い思いの行動をしている。一瞬とて同じしぐさはない。
そしてその1日はその1日だけで完結しているわけではなくて、
それぞれが繋がっていることが、
見事に絵本の中から伝わってくる。

それにしてもきちょうめんなガラゴ。
モノはそのモノの使われるべき場所にきちんと片付けられて、
前作でガラゴへ贈られたモノ達も大切に部屋におさめられていて、
センスも抜群。
作者の島田ゆかさんも、とってもきちょうめんな方のような気がする。
島田さんはカナダにお住まいとのことだが、
本屋さんに並ぶ代表作の「バムとケロ」シリーズのことを、
わたしはずっと外国の本だと思っていた。

よく考えられた絵の構成と、細かい仕事は、
読者に大きな楽しみをもたらす。
ある意味「絵本」のひとつの原点かもしれない、と思う。

今どこにいってみたい、ということとなれば、まちがいなく
ガラゴのおうちにいってみたい....。


2003.11.13




絵本日記TOP