「わらしべ長者」の森の動物版みたいな話し。
作/香山美子 絵/柿本幸造ひさかたチャイルド
小さな頃大好きな本だった。
ぬりぬりタッチの画風、登場するうさぎやくまやきつねやりす、
なんといってもおとぼけなろばのずんぐりとした感じに
毛布にくるまれているようなあたたかさを覚えていた。
これは、ある秋の午後の話しだったんだ、と気付く。
どんぐりも、はちみつも、焼き立てのパンも、くりも、
どれも秋の豊かな収穫。そしてページをめくるごとに
影がながくのびて、
「これは秋の日ざし。」と今ならわかる。小さな頃のわたしが絵から感じていた豊かさは、
秋の季節のことだったんだね。まさに今。うさぎさんがとんかちとんかち、と
しっぽ付きのイスを作りたくなってしまったのも
創作意欲かきたてられる秋のせいかしら。「どうぞのいす」というネーミングも
わくわくしたもの。大人になって読み返してみて、
よくできた本だな、としみじみ思う1册。
それを「よくできてる!」とかいう理屈なしに
感じ取ることができる子供時代が、
なにより貴重に思える。
娘の3才の誕生日プレゼントのひとつに選んだ。2001.10.