ほたるを見にいった。
村には毎年ほたるが見られる場所がいくつかあって、
それでも今まで遭遇できなかった。
「車のハザードをたいたりしたらでてくるよ」と教えてもらって、
ようやく会えた。
小さな水田のすみっこのほうで、
たくさんの小さな光がまたたいている。
それらがふわふわとうかんできて、
うでやあたまにとまってくる。
胡桃がてのひらをだすので、ほたるをのせてあげた。
彼女の手の中で、静かに光る。
光っては消え、光っては消え、
そしてふわりと暗闇に舞っていく。
胡桃が手の中にいれておいた1ひきと、
胡桃のあたまの上から離れなかった1ひき。
そして自分から車に入ってきた2ひきを連れてかえり、
びんにいれて、真っ暗な部屋で静かにみていた。
よっつの小さなまたたきは力強くもあり、はかなくもあった。
窓から逃がしてあげると、
胡桃が「またらいねんあおうね」とつぶやいた。
だれもが幻想的と感じる灯だと思う。
はるか昔からひとの心の中に
この静かなやすらぎの時間をもたらしているのだろうと思うと、
なんだかふわふわとした夢をみているような気持ちになった。
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