家の前の通りにあがって、
広がる畑の脇に立ち、胡桃の帰りの園バスが着くのを待っていたとき、
山のにおいを、一瞬海のにおいと錯覚して、
ひとりふしぎな感覚におちいっていた。
草をひきちぎると、野生のにおいがする。
花の香りのように酔わせるものとは異なった、
生命力をぎゅっと凝縮したような力強さがある。
山にも海にも通じるものがあるのかもしれない。
「きょうはようちえんでよもぎつみをしたんだ」といって、
家に着いてからも庭のよもぎを集める胡桃。
他の草が入らないように、と
なかなか丁寧な気配りをしていることにおどろく。
おやつによもぎパンケーキ。
ボウルにたくさん摘んだよもぎが、ゆがくとすっかり小さくなってしまったことに、少しがっかりしたようだけれど、
胡桃もフウタも3枚ずつ完食。
かおりがしっかり主張している葉や草は、
ふところ深さを感じるし、
口に含むと安心する。
毎日通りの隅々まで目を凝らして、
あれこれ草をみつけてはその成長に驚いたりしている胡桃のことも、
ほほえましく思う。