g.無垢なゆえにひびくこと....
胡桃とふたり、白馬へ温泉に入りにいった。
たまに幼稚園が休みになるときは、胡桃とふたりでゆっくり過ごすことにしている。
近頃は家族みんながフウタに翻弄され気味だし、
たまにはママべったりで過ごさせてあげたいな、と思うわけである。
湯気立つ温泉。あったかい。
ひろーいお風呂を胡桃とふたり占めだ。
コーヒー色の湯舟で、ばた足の練習をしあいっこした。
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温泉の後はジェラート屋さんというのがお決まりのコースで、
楽しみにしていったのに...。
かわいそうなことしてしまった。
胡桃が食べることのできるシャーベットがあるかどうか聞かずに行ってしまったのだ。
「きょうはアイスやさんのアイスをたべられない」とわかったときの、
胡桃のフクザツな表情は強烈だった。
泣けばいいのに、とさえ思ってしまった程。
でも胡桃は自分の食物アレルギーのことについては、本当にしっかりした自覚を持っている。
しばらくの沈黙があってから、その後饒舌になる。
わたしのことを気遣っているのだ。
気をとりなおして、おそばでも食べにいこうか、と車を走らせたものの、
しばらくすると何とも申し訳ない気持ちになってしまい、
私の方が溢れ出る涙を隠すのに必死になってしまった。
沈黙に耐えられなくてCocco.のMDをかけたら、助手席の胡桃が音楽にあわせて大声で歌い出した。
すごい陶酔ぶりだった。
ちょっと前、フウタがコンビニ買うといってきかなかったので
キャラメル味のチュッパチャップス(乳成分が入っている)を2つ買って帰り、
「牛乳大丈夫か試しに食べてみようか?」と半ば強引にちょっとなめさせてみたのだが、
2,3分で顔が真っ赤に腫れて咳き込み出した。
その時もそうだった。
「もしカイカイになっちゃったら.....」という感じで、
わたしに隠れながらおそるおそるなめていた。
スーパーで買い物をするとき、
わたしがひとつひとつ手にとって食品表示を確認することも、胡桃はよくわかっていて、
「これほしい」と言う前に、「これたべれるってかいてある?」と聞く。
いったい誰が彼女の思いをすべて察することができるだろう。
胡桃の中で、自分のアレルギーというのは、もう自分の枠を超えているのだった。
そして、私が気遣いのいたらなかった場においては、
胡桃は自分でそれを消化し、反対に気使いまでみせるのだ。
フウタの行っている託児所に、新しいお友達が入ってきた。
同じように卵牛乳アレルギーを持っているコで、
「●●くんもたまごとぎゅうにゅうたべたらカイカイなるんだって。かわいそうだね。」と胡桃に話すと、
「かわいそうじゃないよ」と言われてしまった。
大切なのは、ふつうに過ごすことなのだ。
節々になにかがおこっても、親は動揺せず、どしんと構えていることなのだ。
感情に流されることなく、影でさりげなく気使ってやることなのだ。
がんばっているのは胡桃の方なのに、
ちょっとしたことで涙を出してしまうわたしの何と小さいことか。
情けなくて涙が出てくる。
皮膚のアトピーが本当にひどかった数年前、
チャイルドシートで血まみれになってかゆがる胡桃の脇で泣いたことがあるが、
あの頃のわたしはもっともっと気丈だったな。
だめだだめだ、今やその胡桃に諭されているのである。
とりあえずジェラートやさんの電話番号を携帯に登録しておく。
今度はちゃんとシャーベットを食べさせてあげよう。
Coccoさん、あなたはすごいです...。
4才のオンナノコがあなたの歌が好きだといっています。
021129.