oto-o-abiru....
pianoのけん盤をたたく。
1音1音がまるく、さえわったって響く。
秋は映画のサントラのよう。
さまざまな場面での思いが胸の奥から沸き上がってくる。
まるで魔法だ。
それは心地よくもあり、せつなさにどうしようもなくなったりもする。
初秋に聴く音楽。
バンドをやりたいと思ったキモチの原点であるSwingOutSiter、
cobaと最後の1年コピーバンドをやっていたCorduroy、
ハードロックの面々も思い出したように時折ひっぱりだされる。
そしてJAZZ やピアノの響きの輪郭の丸さといったら......。
やはり秋に聴くにまさるものはない。
夏のおわりに、バンドをやっていた頃の友人たちと会った。
それぞれを生きていると思った。
実に五年ぶりに会ったサトウクンが
『オレは職場じゃこんなアホなはなしせえへんもん。ちょうまじめ。』といっていた。
昔は髪も長かったサービス満点の彼に、
興奮ぎみの胡桃がまとわりついて大騒ぎしていた。
私達には家族臭がぷんぷんしていた。
これほど強く感じたことはなかった。
そして彼はわたしにつぶやいた。
『すっかりかあちゃんやねんなあ....』。
あの頃の友人に、子供がいるひとはほとんどいない。
ひとりだったころのわたしと、
ひとりだったころのcoba.と、
ひとりだったころの友人。
家族をもったわたしと、
家族をもったcoba.と、
そしてわたしたちの子供。
くらくらする空間がそこにはあった。
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音を浴びる。
旋律の響きに心を共鳴させ、
限り無く無に近い心境で震えることができる。
7月に新宿でラストライブをやって解散した下の弟のバンドのCDもよく聴く。
ジャケットは上の弟の作品だ。
バンドをやっていた時代に得た何かをたずさえ今を生きているのは確かだ。
今は、おきざりにしてしまったかすかな欲望を弟達の一挙一動に感じ、
静かにエールを送っている。
秋という季節は
音の響きに心をうばわれながら、じんわりと過ぎていく。
毎年のこと。
2002.9.29.