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「チリとチリリ」
どいかや 作/絵 アリス館
胡桃が「あったかいスープ」がのみたい、とよく言う。
無垢の白パンをちぎって、スープにひたして食べるのが好きで、
ほうれんそうの混じったみどりのパンだと口をつけない。
フウタはジャンパーのボタンを全部とめないと怒るし、
トイレのときはパンツもズボンも全部ぬがないとだめなのだ、と訴えるし、
ドレッシングのふたがちゃんと閉まっていない!とわたしに指摘する。
子供達の中に芽生える「こだわりの加減」に、
近頃あたふたすることが多い。
いいおてんきのあるひ、
チリとチリリは自転車にのって、
チリチリリ、チリチリリ、とうたいながら、もりのなかをはしっていく。
いいかおりのするもりの喫茶店にはいり、ひとやすみ。
もりのサンドイッチやさんで、それぞれのサンドイッチをかい、
いけのほとりでのんびりとみずあび、おひるね。
夜になると、もりのホテルではじまったえんそうかいで、
いっしょにチリチリリ チリチリリ、とうたいだす。
もりの喫茶店にはいろいろな大きさのテーブルやいすがあり、
もりのサンドイッチやさんにはいろいろなパンとジャムがあり、
もりのホテルには、いろいろな大きさのかぎとドアとお部屋がある。
ふたりは、ふたりにちょうどよいものを選んでいくのである。
ちょうどよい、がある安心。
自分にあったものを選ぶ贅沢。
どんぐりコーヒーとれんげテイーや、
くるみパンのいちごジャムサンド、きなこパンのくりジャムサンド。
チリとチリリが選んだモノたちはとびきり美味しそうにおもえるし、
もりのホテルで、ちょうどよい大きさのベッドのある部屋に落ち着いて、
いろいろな動物達といっしょにうたう夕べの楽しそうなこと。
なにより彼女たちは、じぶんにあった時間の過ごし方を知っている。
どいかやさんの絵本は、
どんどん深く魅力的になってくるように思う。
石版画のような絵をめざしている、と雑誌で読んだことがあるが、
紙の上の鮮やかな色鉛筆の質感は見事に繊細で、
それでいてフェルトのようにふわふわとほのかにやさしい。
ストーリーの素朴さは、読むものを優しく包んでくれる。
素敵な絵本を作られる方だと思う。
2003.12.10
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