「3びきのくま」
トルストイ作 バズネツォフ絵 おがさわらとよき訳 
福音館書店


ロシアのお話の魅力のひとつといえば、その名前の響きかもしれません。
おとうさんのなまえは、ミハイル・イワノビッチ。
おかあさんのなまえは、ナスターシャ・ペトローブナ。
ちいさなくまのこのなまえは、ミシュートカ。
繰り返して読んでいると、こどもはすぐにこの名前を覚えてしまうからすごいです。
息子は「ぼくミシュートカね」とかいって“3びきのくまごっこ”をしていたりする。

WORKSHOPをはじめた当初、木のスプーンを手にとってくださったお客様が、
「3びきのくまのおさじを思い出しました」と教えてくださって、この絵本を知りました。
ロシアの古くからの民話です。
森の中で女の子が迷い込んだおうちにあったのは、3つのおわん。
おおきなおさじ、ちゅうくらいのおさじ、ちいさなおさじがそれぞれに添えられています。
すうぷ、いす、ベッド、しきふ...それぞれ3びきの大きさのものがきちんと整えられています。
そんな律儀なところが民話らしくて好きです。

このお話は、多くの絵本作家によってたくさんリメイクされ、出版されていますが、
やはりこのバスネツォフの絵は魅力的です。
少し沈んだトーンの森の空気感と、その中のお花や植物、きのこ達の愛らしいこと。
北の方の森というのは、どこかツンツンして暗く静かで、
古くから変わらず有り続けている印象があります。
その雰囲気が、くまたちのこわさをまた引き立てている。
(とくにおとうさんのミハイル・イワノビッチはとってもこわい!)
反面おんなのこの服、かごにいっぱい摘んだ草や木の実、くまたちの敷布、
そんな個々は非常に洒落ていて、大人の心もひきつけます。
バスネツォフの絵を見ていると、ロシアの人々のまっすぐな美意識が感じられるのです。

民話、昔話、おとぎ話、といった古くから伝え継がれているお話が好きです。
話の脈絡がとても淡々としていて、こわさもストレート、安心も等身大。
(このお話の中で「だれだ、わたしの おわんの すーぷを のんだのは」という
おとうさんくまの言い回しに、子供達はおもしろいほど震え上がります!)

各国の昔ばなしをもっとたくさん読んであげたい。


2006.1.17



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