「おやすみなさいのほん」 福音館書店

マーガレットワイズブラウン文/ジャンシャロー絵
石井桃子訳




夏の盛りを過ぎ、日々冷え込みが増してくる季節には、
少しずつ外が静かになるのを感じずにはいられない。

あれほど音を響き渡らせていた虫や鳥は
どこへ消えたのだろう。
葉が落ちる音までわかる。
雪はすべての色をうばい、
夜には月の光りがかろうじて雪の庭を照らしている。

いのちの気配すら感じることのできない
静かな、静かな夜。
藍色の空を見上げていると、自分があまりに小さすぎて、
取り残されたようで気が遠くなり、
はやばやとベッドにもぐりこむ。

この本のページ一枚一枚を丁寧にめくる。

「ねむる」という言葉がなんともあたたかく響く。
ことりもさかなもひつじも森のけものも、
こねこもうさぎも、よその小さなこどもたちも、
みんな、みんな、 静かな闇夜の中で
「ねむたい」と肌をよせあい、 ねむりにつこうとしている。

わたしはココロからほっとする。
そして「母なる大地」の偉大さとぬくもりを感じる。

ダンナの母が、ダンナの小さい頃に
何度も読み聞かせたという本だという。
その時の流れを思うと、
坦々とした文章のながれの中に更に大きな安心感を覚える。

わたしも、この本を何度でも子供に読んであげたい。
安心して小さな寝息を立てはじめたら、
その顔を見てわたしも安心してねむる。

もうすぐ春。

雪の下では、
新しいいのちが 深い眠りから覚めようとしている頃だ。




2001.3

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