いつ産まれてくるのかさんざん待ったから、
陣痛がきたときはうれしかった。
それでもまた陣痛がなくなってしまったりして、
一旦家に帰されるかとヒヤヒヤしてまいった。
陣痛はあかちゃんが産まれるためのエネルギーだ。
痛みがきてくれるのを願うなんて、
こんな時しかない。
陣痛は波だ。
痛いけれど休みがある。だからのりきれる。
波がひいたときには
ねむってしまいそうな位リラックスできて
はやく赤ちゃんの顔をみたい、という気持ちが
次の陣痛を受け入れるパワーになる。
いよいよもうすぐ、というとき。
赤ちゃんの頭がでようとしているところを鏡でみた。
わたしは自分でも聞いた事のないような声を出していて、
それでも目を開けて、
赤ちゃんがわたしのお腹にいることと、
今その子が出ようとしているという現実を受け止めようとした。
そして、
羊水でぬれたままの赤ちゃんをそのまま胸に抱いた。
まだわたしとへその緒で繋がっていた。
もう終わったんだ。
わんわん泣いた。
それからずっと、
ふうはわたしの側にいる。
ときどき、わたしの中から頭をのぞかせていた
動物的でちょっとグロテスクなあの瞬間を思い出す。
あまりに大きな出来事で、
現実離れしているような浮遊感さえ覚える。
良かったのかわからないけれど、
胸がいっぱいになるから、
わたしの体も気持ちも
もう回復してきている証拠にちがいない。
2001.2.21 |