髪を切りたい。
眉と爪の手入れをしたい。
食器棚の中の整理をして、
机に山積みになった本も、気に入ったものだけ並べて整理したい。
大きなポットで入れた紅茶をゆっくり飲みたい。
天気の良い日に干したぱりぱりのシーツをベットに敷いて、
そこでそっと横になって、
旦那に「よくがんばったね」と褒めてもらいたい。

子供を産んだ、その顔を見た瞬間の達成感。
それと同時にわたしは、
まるで羽がはえたような解放感にひたっていた。
10ヶ月間の身体的負担がそうさせていたのは否めない。
暴れん坊のおねえちゃんのことは、母にお願いしている。
わたしは2人目の出産で、
母になったというより、
女としての自分を取り戻したい強い衝動にかられていた。

外では時折粉雪がちらついていた。
病院で、本を幾册か読んだ。ただ坦々と。
自分の細胞の一つ一つがぴくっと起き上がってくるような気がした。
街の病院、夜はひかえめのネオンの灯りが雪に当たって反射してキラキラ光る。
このまま新幹線にのれば東京までいけちゃうなーとか思っていた。
なんだかどきどきした。



眠り、起き、眠り、起き、
日々少しずつココロが冷静になってきた。

横には、息子が何も言わず静かに呼吸している。

次第に胸の奥から
じわじわと子への愛情が湧いてくるのがわかった。

ーーわたしのこども。


きっと2人目の余裕だと思った。
いらぬ不安や心配、戸惑いがない。
訪れたシアワセの灯を前に、
それをより純粋にうけとめることができて、
わたしは
恋をしたようなときめきさえ感じて、
顔の横にこぶしを作ってこちらを見つめる小さな命に
頬をよせた。

息子

かわいい我が子。

いい顔してる。
きっとわたしも。

2001.2.20










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