少ない人数の小学校に子供を通わせている保護者の運命だけれど、
幼稚園から引き続き、3年連続PTAの役員がまわってきている。
今年は教養人権委員。名ばかりの委員だけれども、
その関係で、沢山の”講演会”を聴く機会に恵まれている。

委員を受ける前のおもーい印象は、
講演会への参加の回を重ねるたびに払拭されていき、
今ではより多くの講演会に参加したいくらいの気持ちだ。
学生時代をだいぶすぎて、
久しぶりに授業を受ける感覚がよみがえっている新鮮さもあるかもしれない。
ずっと使っていなかった脳を使っているような感覚だ。

「知的障害者支援について」「親子の気持ちの伝え方」
「部落差別と行政の関わり」「DV等の女性の人権問題」などテーマはさまざま。
生の人の声を聴くこと、その方独自の経験と考えを伝え聞くことって、
こんなに楽しく栄養になるものなんだ、と気づかされている。


先日は、ある大学の幼児教育科教授のはなしを聴く。
「子どもの育ちと親の養育態度の関係」「21世紀に生きる力とは何か」...。
データも含めて講演くださった。
興味深かったのは、21世紀を生き抜くのにはEQが大事だ、ということだ。
EQとは心の知能指数。IQの尺度より深い人の認識力の判断指標だという。
自分がどんな人間が自覚すること。判断力。共感。協力。思いやり。
感情のままになることからの自制。目標を失ったときも自分を励ます能力。

話がテーマから脱線する位の勢いのある方の講演の方が
聴講者として惹き付けられるパターンが多い。
今回の教授の講演でも、
一番の印象であり、栄養となったのは、
「もうすぐ70歳、今年度で職を辞して、
来年度から自分が何をして世の中のお役にたてるか、自分探しの旅に出るつもりだ」と
意気揚々とお話になっているその姿。
70からの自分探しって、聞いていてすかっとして気持ちいい。
日本、世界各地をまわるお金もしっかりためてあるとのこと。
そのまま人生の旅が終わらないようにしなきゃ、なんて冗談をおっしゃっていたけれど、
「子育てに翻弄する世代にとって、
元気に前向きに生きる人生の先輩の存在って、すごく励みになるね」という言葉が
会終了後に保護者間にでる、いい講演会だったとおもう。

その日は息子の授業参観もあった。道徳の授業だった。
3枚の風景写真(夕日だったり、木々だったり)が黒板に張られ、
子供達がそれぞれに思ったこと(オレンジ色できれいとか、気持ちよさそうとか)を出す。
先生が「さて、このたくさんの感想の中で、正しい答えは何個あるでしょうか。」と問いかける。
息子が手を挙げ、答える。「ぜんぶ正しい」!
生徒がみんな賛成する。
「思ったことはみんなちがっていい。」「それぞれ思うことはちがう」
「思ったことは正しいとか間違っているとかきめられない」etc...
大人顔負けの主張なのである。

後の懇談会で先生に、なんかみんなすっかり大きくなったような印象をもった、と伝えると、
先生はおっしゃった。
「こどもたちは、理屈は案外わかっているもんなんです。
こちらとしては、悩み考える、という行程を大事にしたいんですけれどね。」
みんなそれぞれ違っていい、という理屈を頭で得るのは案外簡単で、
感覚としてそれを体で得て、行動に反映していけるかどうかはまた別だということだ。

ははーん。私もそのとおりだ、と思った。
理屈を得ただけでわかったような態度でいがちだ。
行動する。その考えをもとにいい人間関係を作っていく
そういうことって、とっても難しくて、案外できていないものなのだ。
頭でっかちの裸の王様になりたくない。
物事の考え方のくせに気付き、楽な方に自分をかえたいと思っているならば、
たいへんな努力がいると思っている最近、とても印象に残った経験だった。


2008.11.25




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