1年ぶりに戸隠を訪ねた。
車で一時間もかからないところだが、
山の表情は私の暮らす山の表情とまた違うのがおもしろい。

杉の大木が奥社にむかって列をなしている。
枝のあらあらしい曲がり方、
静けさのなか風がかさこそとたてる音、
動物の気配、
あいだをぬってさしてくる日の光.....。

荘厳さを実感せずにはいられない。
まさに、「モチモチの木」や「花さき山」の挿絵を描いた
滝平二郎さんの絵の世界だ。

信州は全国に誇る伝説や民話の宝庫だという。
北信の民話を読んでみると、地や寺、川、沼、池や湖、
おのおのに根付いた伝承伝説があるのに驚かされる。
山に囲まれた地形、そして冬は雪におおわれる地盤が、
伝承文化をはぐくんできたのだろう。
戸隠の木の精気をあびていると、
目の前の木の枝先に、動物や精霊がいるようにおもえてしょうがない。

私達の暮らす村には「虫倉山」という山があり、
昔おぼれそうになった坊主を助けた山姥がいた、という伝説にもとずいて、
“やまんば”が身近だ。
あばれ龍の彫刻を山門にすえた伝説のある村のお寺の七不思議を調べたり、
村の名所と伝説を”かるた”にしたりという活動が、小学生の中でおこなわれている。

伝説は、その祖先の体験だ。
見聞きし、世代に継がれ、今にいたる、その中で生きている現代の私達。

戸隠の山々の荘厳さの前で、あらためて、
その豊かな伝承文化がうまれた源をみたように思った。

2008.11.15





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