風がゆさりゆさり葉を揺すぶる。
土の上に一枚、赤栗色のさくらの葉がはらり、かさっと音をたてる。
すっかり乾燥した葉の音だ。
りりりり.....と虫の声が生命の気配を思わせる。なんて透明な季節だろう。
今年は、太い毛糸で編まれた大判のポンチョを1枚買った。
外でも家の中でも着ている。着ていると安心する。布団の中の心地よさと似ているからだ。
ちょうど一年前の冬に買ったラメ入りの黒のストールも、外中かまわずまとっていた。
まといながら、お風呂上がりの娘の髪をかわかしたり、
息子をひざにのせて抱きしめながら学校でのお話をしたりしていたな。
私の膝の上でさわるこどもの足のうらは、いつもやわらかく湿っていた。
ストールにくるまり肌恋しくなっているのは私のほうだった。
不平不満をたらたらもらさない人達を私は慕うし、心から尊敬する。。
自分だけが不幸だと思ったり、そう思うことに酔ったり逃げたりしていない。
冷静な頭を持っていて、距離をちゃんと置きながら、誰よりもやさしく暖かいひと。
支配しようとしないし、形だけを繕ったりしない。生き方を命令しない。
小さな親切に、見返りのない優しさに、どれほど安心するか。
過去のせいにするか、過去のおかげととらえるか。
私自身の力の知りどころだ。
2008.11.4