「こりゃ まて まて」
中脇初枝 ぶん 酒井駒子 え  福音館書店



酒井駒子さんの描かれるこどもの絵が好きな方でしたら、
たまらなく心つかまれる一冊だとおもいます。

2歳くらいのよちよちあるきのころ。
うごくもの、めのまえにあらわれるもの
虫であれ動物であれ、
こわさなどまるでかんじずに、まてまてまて、とおいかけるこども。
親の大きなうでやせなかに、全身で身をゆだねるそのすがた。

そんな時があったなあ、とじわじわと思い出されてきます。

先日小学校で、カウンセラーの先生の
「子どもの成長と大人のかかわり方」の講演会がありました。
大人は、子供の目線を共有していきたいもの。
子ども自身のそのままの姿を認め受容することで、はじめて
温かな思いやりの心が育ち、培っていける、とおっしゃっていました。

座談会の中で、
「うまれたときは、親はみな、
こどもがうまれてきたことに感謝していて、
あたたかな気持ちでこどもの行動を見守っている。
だけどその子が小学生にもなると、
あれができない、これができない、ってカリカリ怒るばかりになるのよ。
今こどもに“できたできない”“はやくはやく”と怒っていることって、
10年20年後を思えば、たいしたことないことが多いのにね。」
なんてお話をしている先輩お母さんがいらっしゃいました。

「たいせつなことはね、目に見えないんだよ.....。」
サンテグジュペリの「星の王子さま」で
王子さまが言っていた言葉が脳裏をよぎりました。

駒子さんの絵で、
幼年のこどもたちのむじゃきなあのシーン、このシーン、
いろいろと思い出されました。
もう目の前にはみえない、だけど家族の心の中のたからものであり続ける
数々の思い出の断片。
ちゃんと心のなかにソンザイしてる。
再確認できるしあわせ。

絵本のチカラにあらためて感謝....。

毎日、いっしょにいる時間、
できるかぎり笑顔に充ちていられるように、とおもいます。

今も貴重なひとときであることは、いつだってかわりませんから。





2008.6.2



絵本日記TOP