「ゆきのひ」
加古里子 さく/え 福音館書店



ものすごく魅力的な表紙だとおもう。

雪の粒や結晶は、輪郭もあやふやにただよう。
小さな口が限りなく愛らしいゆきだるまちゃんがひょろりと佇む。
雪をたっぷりかぶった
三角屋根のえんとつからは、ちょろりけむりがのぼる。

全体の淡いグレートーンも、赤い長靴も、水色ににじんで光る雪も、素朴に調和していて。
そこにうつくしい「ゆきのひ」のタイトル。

決してグラフィカルではないのだろうけど、
加古さんらしいとぼけた可愛らしさが、
雪の持つそのひんやりさとは対称的に、心をほっこりとさせてくれます。

初版1966年。豪雪地帯のゆきと共存する暮らしを描いた絵本です。

雪がちらちらと舞う季節になると、
りっちゃんちのおかあさんは、やさいをむろにしまいます。
とよちゃんちのおじいさんは、ゆきがこいをしっかりします。
えいちゃんのおとうさんは、すきーじょうの食堂にぎゅうにゅうとたまごをとどけます。

とおりのあちこちにかまくらができて、
りっちゃんたちは中でなぞなぞあそびをしたり、かまくらをつくったりします。

ふぶきが村をおそいます。
とよちゃんのおとうさんも、しらせをうけたりっちゃんのおとうさんも、
とよちゃんのおじいさんも、えいちゃんのおとうさんも、
発電所のきかいを直しにいったり、雪でうまった線路をなおしにいったり
吹雪の中をはたらきます。
ふぶきにまけるな、と。

そして、また無事でんとうがつき、汽車がはしり、
とおくで「ぼぼー」というきしゃの合図がきこえ、
りっちゃんはあんしんしてねむるのでした。



読み終わるときには、すっかり
りっちゃんや、とよちゃんや、えいちゃんの家族になったような気持ちになります。
かこさんの人情あふれた語り口のなす術だと思います。

ラッセル車がせんろの雪かきに走ったり、
ひとが、かんじきをはいてあるいたり、
あちらこちらでゆきおろしが見られたり、と
昔の雪の中での暮らしから生まれた文化が、お話の中で息づいています。
とくにわたしがドキドキするのは、
子供たちがかまくらの中で七輪でおもちを焼き、
ニコニコ笑顔でお茶(あまざけ?)をすすっているページです。
「あんまり おもしろくて、おかあさんが よびにくるまで いつまでも あそんでいました。」
とあるけど、ほんとそのわくわくさがよくわかります。

自然と、人間の暮らし。
自然のなかで、人間は知恵をだし、努力をし、暮らしていかなきゃいけない。
そういう正当なバランス感触を味わえる絵本が好きです。

加古さんの本をよむと、つねに、
かしこくありたい、という思いが沸いてくるのはなぜなのでしょう。




2008.1.20



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